2025年6月5日、日本の新潟県見附市で『RRR』では初めての合唱上映が開催される。
日本で『RRR』が上映され始めたのは2022年10月。2023年にゴールデングローブ賞やアカデミー賞を獲得したことで徐々に人気や知名度が高まり、日本各地でマサラ上映や応援上映が催されたが合唱上映というスタイルでのイベントは初である。
このイベントを計画したのは、映画関係者や法人・組織団体ではなく一般人、しかも個人だ。
投影設備や大人数を収容できる施設を有しないため、公共施設を借りての開催となる。
合唱上映という形式は、日本では2014年に『アナと雪の女王』でミュージカル・ナンバーを一緒に歌えるという触れ込みで実施されている。
また同年に『レ・ミゼラブル』でも開催され好評を博し、翌2015年にも同様のスタイルで上映された。
(2018年に上映した際は「発声可能上映」として復活している)
いずれも観客には大好評だったが、その後の展開をみる限り「合唱上映」という鑑賞スタイルが日本に定着したとは言い難い。
事実、この2015年以降いわゆる劇場と称する場では行われていない。
実現すれば実に10年振りの合唱上映となる。
『RRR』は上映開始後からファンのみならず、鑑賞した人から熱烈に支持されてはいたが、不動の人気を決定づけたのはやはりアカデミー賞だ。
話題性に乗り鑑賞した多くの人が「もっと早く観ればよかった」と感想を述べている。
その後も上映館は順調に増え、IMAXを備えた劇場では軒並み復活上映を果たした。
それにとどまらず、コラボグッズやアクセサリーの販売, 期間限定でのコラボカフェやレストラン, 果ては銭湯まで登場。世界に誇るサンリオもRRRキャラでグッズを制作している。
日本ではほぼ見られない長期的な連日上映も、のべ630日を記録した。異例のロングランである。
これはもはや社会現象といっていいだろう。
加えて、宝塚の演目にも選ばれ、東京公演を S・S・ラージャマウリ監督が観覧したことも併記しておきたい。
漫画やアニメ文化が根付いた日本らしく、ファンアートも多く見られる。
SNSでは絵師と呼ばれる人やプロのアーティストらが『RRR』の漫画やイラストをアップしている。
昨年の10月には、有志による監督の全作品のイラストをまとめた冊子が贈られた。
それに応え、監督からもビデオレターとして日本のファンにメッセージが届けられた。
相思相愛ともいえる特別な感情を互いに持ってるように見えるのは欲目が過ぎるだろうか。
『RRR』の功績が一過性のブームでないことはその後の展開をみれば明らかだ。
現在の上映スケジュールは以前と比べ、明らかにインド映画のタイトルが増えている。
これは劇場に足を運ぶ固定層を獲得したことの表れといえよう。
もともとインドは映画製作が盛んであったが、裾野が大きければ必然と外国に配給される作品は厳選される。
門戸が広がったことで、良質な作品に触れる機会もより多くなった。
どのようなカテゴリーにおいても固定ファンというのは熱量が高い。インド映画も例外ではない。
こと日本においては熱心なファンが多く、日本語字幕でなくとも鑑賞したり、好きなスターの言語を習得しようとする者もいる。
ファンとしての作法は心得つつ、少しでもスターの世界に近づこうとする勤勉さを併せ持っている。
そうしたファンの礼儀正しさと日本の文化や風景に感銘を受けるのだろうか。
魅了されたように二度三度と訪れ、日本のファンに嬉しい驚きをもたらすこととなる。
N・T・ラーマ・ラオ Jr.氏は映画『DEVARA』の日本公開に先立ち、4回にわたる舞台挨拶を行ってくれた。
待ち望んだファンにとっては破格のギフトといえる。
さらに女性芸人に触発されダンスまで披露した。会場中に歓喜の悲鳴が上がる。
この様子は瞬く間にネット上に広がり、本国のファンにも共有された。
間を置かずして、今度は『RRR:Behind&Beyond』の日本公開に合わせ S・S・ラージャマウリ監督が来日した。
こちらも5回にわたる舞台挨拶を引っ提げての訪日である。
これにあわせて『RRR』も全国規模で復活上映を果たし、映画館側もはしご出来るようスケジュールを組んでいる。
こうしたムーブが呼び水になったのか、大手系列店だけでなくミニシアターでの復活上映やマサラ上映も果たしている。まさに不死鳥の如き作品だ。
初見の観客を虜にし、今なお新たなファンを獲得している『RRR』。
先日、日本での興行収入が25億を突破した。未曾有の記録である。
断続的に上映されていくであろうこの映画は今後も人々を魅了し続けるに違いない。